X線

X線は分析や医学など様々な分野で活用されており、一般的にX線管球を用いて発生させている。この方式では、外部から印加する電圧、電流のみでX線のエネルギー・強度を制御可能であり、応答速度が比較的速いといった長所がある。一方、高電圧源や冷却機構が必要であるために、小型化に制約があり、エネルギー効率が0.001%以下と非常に低効率である欠点も併せ持っている。

これらのデメリットを解消できる新しいX線発生方式をJ. D. Brownridgeが報告した1)1〜数十Pa程度の低圧ガス中において異極像結晶(例えば、LiNbO3[ニオブ酸リチウム]LiTaO3[タンタル酸リチウム]CsNO3[硝酸セシウム]など、焦電性結晶ともいう)の温度を変化させると高電界(結晶の厚み1mmに対して約20kV)と電子が同時に発生し、電子が高電界により加速され、金属ターゲットに衝突することによりX線が発生する。本方式により発生するX線は、連続X線に対する特性X線の強度が強く、単色性が極めて良好であるという特長がある。

 本研究室などが明らかにした、異極像結晶を用いた電子や電界の発生のメカニズムを左図に示す。左図のようにc軸方向に分極方向を揃えた異極像単結晶であるLiNbO3は、キュリー温度以上では、リチウム正イオン(Li+)の重心は酸素負イオン(O2-)の最密充填層内から、ニオブ正イオン(Nb5+)は酸素負イオン(O2-)が形成する八面体の中心からずれるために分極状態にある。しかし、熱平衡状態においては、結晶の電気面(自発分極の方向と垂直に交わる面)に自発分極による表面電荷と逆符号の電荷が吸着し、中和されている。例えば、負電荷面(+z面)の温度が上昇すると、自発分極の大きさが減少するが、電気面に吸着している正電荷は、時間的に遅れて脱離する。このため、過渡的に電気面(+z面)が正味正に帯電し、結晶内外に電界が形成される。また、温度を降下させることにより下図に示すような、昇温時とは逆向きの電界が形成される。この電界は、例えばニオブ酸リチウムの場合、約20MV/mに達する。結晶の電気面間に形成される電位差は結晶の厚さに依存し、原理的には、結晶の厚みを増すだけでより高電圧を形成でき、例えば10mmの厚みで最大200kVに達する。この強電界により雰囲気気体分子が電離されて生成される正イオンや電子等が、結晶が形成する電界で加速され、ターゲットに衝突することによりX線、ガンマ線(γ線)、陽子、中性子が発生することが報告されている2)。陽子、中性子源としての応用にとどまらず、異極像結晶を温度変化させるだけで、常温での核融合反応を実現でき、将来のエネルギー不足問題に向けて、新たなエネルギー発生源としての応用が期待される。